2017年1月18日水曜日

「精巣サイズ これだけ違う!」無精子症の原因たんぱく質解明 近畿大


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無精子症のマウスの精巣(右)は、正常な野生型と比べて小さいのがわかる(近畿大学生物理工学部遺伝子工学科)



 日本では現在、5.5組に1 組の割合で、不妊治療を受けるカップルがいるが、そのうち半分は男性側に原因があると考えられている。そんな男性不妊の原因のひとつ、無精子症のメカニズムについて、近畿大学などの研究グループが18日、マウスを使った実験で突き止めることに成功した。

 

 年齢を重ねるといずれ無くなる卵子とは違って、精子は精巣の中にあるもととなる幹細胞が分裂して自己複製を繰り返すため、いくつになっても存在する。無精子症は、幹細胞の仕組みの異常が原因だが、これまでそのメカニズムはよくわかっていなかった。

 

 近畿大の山縣一夫准教授や中部大学、九州大学のグループは、マウスを使った実験で、精子の幹細胞が分裂しても、精子を作る細胞分化に異常があると結果的に無精子症になることを突き止めた。

 

 これを左右するのが、ヒトを含むすべての生物が持っているゲノムDNAに巻きついている「ヒストン」の存在。ヒストンは染色体を構成するたんぱく質で、 4種類のコアヒストンがDNAと結合しているのだが、精巣だけにある特定のヒストンと DNAの結合が弱いと、精子幹細胞から精子が形成されなくなるという。

 

 研究グループは「マウスで発見されたメカニズムがそのまま人間に応用できるかどうかは、さらに検討する必要があるが、今回の研究成果を発展させることで、男性不妊症の診断ツールの開発につながると期待できる」と話している。

 

 この研究論文は、米科学誌『セルリポーツ』電子版に18日付で公開された。


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精子ができる仕組み。正常な精巣では、精子幹細胞は自己複製しつつ、細胞分化によって精子を形成(左)。しかし、精子幹細胞に細胞分化異常が起こると、精子が作られずに無精子症となる(右)。(近畿大学)

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精子を精巣に送る精細管の比較。左の正常な精細管の中では生殖細胞がびっしりと存在するが、右の無精子症では精子ができないのでスカスカ状態(近畿大学)

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