2016年2月9日火曜日

肝がん(肝細胞がんとメラノーマ、胎生期の肝臓、腎臓、肺がん)免疫療法の臨床試験を計画 国立がんセンター東病院 (ペプチドワクチン)

勉強の為に引用しました。
http://qq.kumanichi.com/medical/2006/10/post-44.php

 国立がんセンター東病院(千葉県柏市)が、肝臓がんに対する免疫療法の第Ⅰ相臨床試験を計画している。現在申請中の同センター倫理審査委員会に承認され次第始める予定。肝がんで特異的に高発現する腫瘍拒絶抗原の「グリピカン-3」(GPC3)を標的とするペプチドワクチンを使う。肝がんの発がんや再発予防などに効果が期待され、注目されている。

●写真左 緑に光っているのがGPC3のペプチドを表面に出しているがん細胞。周りにいる小さい細胞(大小さまざま)がキラーT細胞
●写真右 キラーT細胞は、がん細胞に穴を開けて殺す。がん細胞の数に対して40倍のキラーT細胞を入れて4時間後、ほとんどのがん細胞は蛍光を放出し死滅している
 (中面哲也・国立がんセンター東病院臨床開発センター機能再生室長提供)
 同病院臨床開発センターがん治療開発部の中面哲也・機能再生室長によると、中面室長は前職の熊本大大学院助手(免疫識別学分野)時代から、東京大医科学研究所との共同研究を進め、2002年8月、新しいがん胎児性抗原GPC3を同定した。

 GPC3は、肝炎ウイルスのHBV、HCVにかかわらず、ほとんどの肝がんで特異的に高発現する。肝細胞がんとメラノーマ、胎生期の肝臓、腎臓、肺で高発現するが、成人では胎盤を除いて、正常組織ではほとんど発現しない。患者の血液中に分泌されることから、中面室長らは、肝がんの腫瘍マーカーとして、採血によるがんの診断にも有用であることも突き止めている。

 同病院は中面室長らのこれまでの研究成果を基に、2種のGPC3ペプチドワクチンを使った第Ⅰ相臨床試験を計画。GPC3が高発現する細胞だけを選択的に狙って攻撃、破壊する免疫療法の開発を目指す。実現すれば、肝がん細胞だけを傷害し、正常組織には傷害を与えない治療が可能になる。中面室長らは、白血球抗原のHLA-A24あるいはHLA-A2によりキラーT細胞(細胞傷害性Tリンパ球、CTL)に提示されるGPC3ペプチドを2種類同定した。HLA-A24は日本人の60%、HLA-A2は日本人の40%に応用可能という。

 GPC3ペプチドワクチンによる免疫療法は、マウスの動物実験では、抗腫瘍効果が認められ、自己免疫現象などの明らかな有害事象は見られなかった。中面室長は日本人のHLAタイプからみて、肝がん患者の85%程度が適応になるとみている。

 計画では、倫理審査委に承認され次第、まずは進行がん患者を対象とする第Ⅰ相臨床試験をスタートする予定。中面室長は「肝がんの再発予防や肝炎、肝硬変からの発がん予防に効果を発揮できるのではないか」と期待を寄せる。第Ⅰ相試験で安全性を検証できれば、予防効果の検証に進める意向だ。肝細胞がんとメラノーマに応用できる可能性があり、その有効性は、研究が進む大阪大のWT1ペプチドワクチン療法に匹敵するとみている。

 同計画は、第65回日本癌学会学術総会で発表された。中面室長は、GPC3などのがん特異抗原に関する研究で、日本癌学会奨励賞を受賞している。(高本文明)

 (くまにちコム「健康・医療」2006年10月25日付)

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